物理的リスク TCFD開示の一例(八十二銀行、3メガ)

9月15日の日経新聞地方版信越では八十二銀行の物理的リスクについての記事がありました。(紙面ビューアーで地方版をみるのもいいですね。15日は上、16日は下でこちらはアセットマネジメント子会社など運用についての記事でした)

15日の記事では、「大きな数字だ」と、千曲川の氾濫による業績への影響額が融資先の業績悪化や担保の棄損で最大60億円になるとのこと。
浸水の深さが最大10-20mの状況も想定。19年の災害で浸水の深さは長野市で最大4.3m。

八十二銀行さんの統合レポートでの物理的リスクの記述は、
・ 4℃シナリオ(IPCCのRCP8.5シナリオ)等を参考に、長野県内千曲川流域において、気候変動に起因する大規模水害が発生した場合のお客さまの業績悪化および担保価値の毀損の影響を分析しました。
・ 分析の結果、最大で約60億円の与信費用の増加見込みとなりました。

とありました。長野県内の貸出金は28,333億円、率にして0.21%。2021年3月の当期純利益は223億、率にして27%。

CDPのClimate Changeのスコアは2020年A-、2017-2019年はB。2020年には上記推計はないので2021年が公開されたら見にいきましょう。

有価証券報告書の事業等リスクでは、「長野県において、大規模な地震や台風等の自然災害が発生した場合、当行資産の毀損による損害の発生および取引先の業績悪化による信用リスクの上昇など、直接的または間接的に、当行の業績に影響を及ぼす可能性があります」と記載。

(参考資料)

・日銀さんが、「水害が企業財務に与える影響に関する定量分析」のワーキングペーパーを2021年3月に出しています。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2021/data/wp21j03.pdf


分析結果は、以下
①水害は製造業や中小企業を中心に利益率に負の影響を与える。(建設業は復興需要の発生でプラス)
②水害の利益率への影響は短期に収束する
③企業利益への負の影響は水害経験頻度が低い市町村に所在する企業ほど大きい傾向がある

国土交通省 「気候変動を踏まえた治水計画のあり方」提言

https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/r0110/index.html

洪水発生頻度は4℃上昇で4倍になるそうです。

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気象庁 気候変動2020

https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/2020/pdf/cc2020_honpen.pdf

台風については、発生数、日本への接近数・上陸数、郷土に長期的な変化傾向はみられないとしています。

雨の降り方につては、以下。

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3メガについても見てみると、

・みずほは慢性リスク(感染症熱中症)も分析。国内のみ
SMBCはグローバルに
・三菱は新しい2021に期待
・財務的インパクトが累積いくらと2050年時点で最大いくらとに分かれている

〇みずほFG(TCFDレポート2021より)

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〇三菱UFJFG(MUFGサステナビリティレポート2020より)

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SMBCグループ(TCFDレポート2021より)

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以上です

2021/9/17追記

FTの記事から

    The financial impact of wildfires and heavy rains on the Union Pacific railway so far this year could top $100m, as intensifying effects of climate change brought cascading disruptions to the company’s 32,000-mile network.
It’s real money. It’s a real impact,” chief executive Lance Fritz told the Financial Times in an interview. “Weather is becoming more violent and we see that.

    Fritz said Union Pacific was taking protective measures such as raising tracks out of flood plains, installing bigger culverts to ease the flow of water and working to get better weather predictions.

However, there might be “a limit to how proactive [railways] can be in terms of climate resiliency”, said Paterson, because “they’re always under pressure from Wall Street about spending too much money”.